【事例に学ぶ】一番簡単なSWOT分析とクロスSWOT分析のやり方
数多いビジネスフレームワークの中でも定番の「SWOT分析」と「クロスSWOT分析」。読み方は「スワットぶんせき」または「スウォットぶんせき」です。何となく見たことがある、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
SWOT/クロスSWOT分析は、コンサルっぽい言葉でちょっと難しそうに思えるかもしれませんが、決して難しいものではありません。シンプルなフォーマットに書き込みながら自分の状況を整理していくと新たな戦略を考えるヒントが見つかる、とても役に立つフレームワークです。
「戦略」と名の付くものを作りたい人なら使わない手はないというくらい、定番中の定番といえるでしょう。
とはいえ、フォーマットの使い方や分析のやり方は、具体例がないとイメージがわかず、分かりにくいですね。そこでこの記事では、事例を使ってSWOT分析とクロスSWOT分析のやり方を分かりやすく紹介していきます。
読むだけではなく、実際に手を動かしてみることで理解が深まります。特典のテンプレートをダウンロードして、ぜひ一緒にSWOT分析をやってみてください。
目次
1. SWOT分析とは?
事例を見る前に、SWOT分析とはどういうものなのかを押さえておきましょう。
そもそもSWOTは何の略なのでしょうか?
SWOTは、 Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威) の4つの頭文字です。
下のフォーマットを見てください。縦軸が内部要因と外部要因、横軸がプラス要因とマイナス要因です。
このように、現状を自分の努力で変えることができる内部要因と、自分では変えることのできない外部要因に区別して考えることで、やるべきことや課題を明らかにしていこう、というのがSWOTの考え方です。
実際に分析を行うときに使うフォーマットは、こういう形になります。
2. SWOT分析をやってみる
上の表のS(強み)・W(弱み)・O(機会)T(脅威)のそれぞれの枠に、あてはまる要素を書き込んでいくわけですが、ここからはSWOT分析のやり方について、事例を使って見ていきましょう。
ここでは、ある整骨院を例にとり、SWOT分析で現状を明らかにした上で、さらに一歩進めた「クロスSWOT分析」でオプション戦略を考えるというプロセスを、一緒にたどってみることにします。
2-1.注意:いきなり始めないこと!
SWOT分析をする時は、何の準備もなくいきなり強みや弱みを考え始めてはいけません。
SWOT分析を始める前に、必ずやっておかなければならないことがあります。
それは、これから行うSWOT分析の目的を明確にすること。つまり、どんな目標を達成するためのSWOT分析を行うのかをあらかじめ明確にしておくということです。
目的をはっきりさせないまま何となく始めてしまうと、
重要性の低い項目や関連のない項目の羅列になってしまったり
手段が目的化し分析のための分析に終始してしまったり
現状分析ができても、その情報をどう活かせば良いのかわからなくなってしまう
という、とてももったいない事態となってしまいます。
有効な結果を得るために、必ず目的をはっきりさせてからSWOT分析を始めてください。
ではここで、事例としてある整骨院(A整接骨院とします)を例にあげて、目的を見てみます。
- 《事例》A整骨院の目的:
- 売上げをアップさせたい。現在、夕方から夜の時間帯の来客が多いが、昼間の時間帯はあまりお客が入っていないため、昼間、特に午前中の時間帯の来客数を増やしたい
目的を確認出来たら、さっそくSWOTを書き出してみましょう。ここではダウンロードしたシート①を使います。
それぞれの項目では、以下のようなことを考えながら枠の中を埋めていってみてください。
2-2.内部要因を分析してみる(S:強み W:弱み)
強み:Strength
強みは、内部要因の中で目標を達成するためにプラスに働く、ライバルと比べて優位性のある要因のことです。これを伸ばして優位性をより高めていく方向性で考えます。
弱み:Weakness
弱みは目標達成のマイナスに働く阻害要因、または重要な要素であるのに不十分であることです。こちらは何らかの手段で補強する、または克服するための方法を考えます。
強みと弱みを考えるときの視点は、以下のような項目が考えられます。
自分の能力、得意分野、長所・短所、ほめられる事、本質的な強み、パッション、実績、体験、など
商品・サービス、技術、ノウハウ、情報発信力、営業力
人脈、資金、内部スタッフ、協力者、応援者
立地、販売網、等
ではここで、事例のA整骨院の強みと弱みを見てみましょう。
《事例》A整骨院の場合
強み:Strength
■スポーツの怪我の治療が得意
■駅から近い
■痛くない施術
■応援してくれる得意客の存在
弱み:Weakness
■地域での知名度が低い
■情報発信が少ない
外部要因を分析してみる
機会:Opportunity
機会は、目標を達成するうえでチャンスとなるような外部の要因や環境の変化を指します。できれば自分の強みを活かせて、勝機のある競合の少ない市場を見出すことができれば理想的です。
脅威:Threat
脅威は、目標の達成を阻害するような影響を与える外部の要因や環境の変化です。回避することができるか、または何らかの方法で影響を弱めることができるか、を考えます。
外部要因は、マクロとミクロの要因に分けられますが、特にマクロ要因についてはイメージしづらい方も多いようです。新聞やニュースなどで目にするような事柄で自分のビジネスに影響を与えそうなものは何か、という観点で考えればよいでしょう。例として、以下のような項目が考えられます。
政治、法律、経済 ・・・規制緩和、消費税率、景気の動向 など
社会、人口統計・・・社会問題への関心、少子高齢化 など
テクノロジー・・・新技術の開発 など
文化、ライフスタイル等・・・流行、ブーム など
またミクロの外部要因としては、
仕入れ先・販売先
競合の動向
地域住民の年齢層・性別の傾向等
顧客のニーズや傾向
などが考えられます。
では、A整骨院の機会と脅威にはどんなものがあるでしょうか。
《事例》A整骨院の場合
機会:Opportunity
■小・中学校が近い
■高齢者が多い住宅街
■腰・関節の痛みのケアのニーズがある
■介護予防への関心が高まっている
脅威:Threat
■近隣にマッサージチェーン店がある
■価格競争の可能性がある
ここまでのA整骨院のSWOT分析をまとめてみると、このようになりました。
3. SWOT分析のやり方とポイント
ここで、SWOT分析を効果的に行うために、気を付けたいポイントをいくつか紹介します。
分析は客観的に
強み・弱みと、「長所」「短所」を混同してしまうことがあります。一般的に「長所」といわれることでも、それが目標達成にとってプラスに働かないのなら、「強み」とはなりません。分析を行う時は、目標達成に貢献するか阻害するかを軸に検討していきます。
重要な項目は?
SWOT分析は4つの要素からなりますが、すべての要素が同じように大切なわけではありません。その人の状況や分析の目的によって、各要素の重要度は変わってきます。
例えば、分析の目的が「強みを活かした事業戦略を考えること」であるならば、最も重要な検討要因は強みと機会です。重要性の高い、この2つをできるだけ数多く出すことが大切です。そうすることによって、後から戦略を検討するための材料がたくさん手元にあることになります。
行ったり来たりしながらなるべく多くのアイディアを出す
数を出すために、強みと機会については何度か戻って再度アイディア出しをしてみることをおすすめします。どんな機会があるかを検討することで新たに「強み」を思いついたり、「強み」を考えることによってそれまで気づかなかった「機会」が見えるなど、より多くの強みと機会を出すことができることがあるためです。
マイナス要因を考えるときは冷静に
マイナス要因である「弱み」と「脅威」は、一度「できていないこと」「厳しい環境」という視点で見てしまうと、際限なく出てきてしまい、気分が落ち込んでしまうことがあります。
せっかく強みを活かす戦略を検討するために始めたSWOT分析で、ネガティブなスイッチが入ってしまっては本末転倒です。客観的に現状を分析するという視点を失わずに、目標を達成するために克服または回避すべき項目という視点で検討してください。
4. クロスSWOT分析でオプションを広げる
ここまでのSWOT分析では、自分の現状を把握することができました。が、現状を把握しただけでは、肝心の「それで、どうしたらいいのか」は見えてきません。自分の持つ強みやチャンスを生かす戦略オプションを考えるためには、もう一歩、分析を進める必要があります。そこで使われるのがクロスSWOT分析。SWOTで出てきた情報を掛け算して、戦略オプションを考えるためのフレームワークです。
ここからは、クロスSWOT分析について、考え方とやり方を紹介します。
4-1.クロスSWOT分析とは
SWOT分析で出た各要素を互いにかけ合わせて戦略オプションを考えていくのがクロスSWOT分析です。
SWOTの各要素を掛け合わせると、下の4つの組み合わせができますね。
一般的に、それぞれの枠の戦略は次のようになります。
SxO(強みx機会) :強みを最大限に活かしてチャンスを掴む
WxO(弱みx機会) :弱みを克服することで、チャンスを掴む
SxT(強みx脅威) :強みを活用することによって、脅威の影響を抑える
WxT(弱みx脅威) :弱みと脅威によるマイナスの影響を最小限に抑える、または撤退する
これらを、SWOTで上がった要因の掛け算をして考えていきます。
4-2.クロスSWOT分析のやり方
これも、ぜひ実際に書き込みながらやってみてください。これまで、シート①で書き出した各項目を、シート②の外側の各欄に転記した上で、それぞれを掛け合わせるとどんな戦略が描けるかを考えます。
なお、戦略案を出すときは、どれとどれを掛け合わせたのかを書いておくと、後から見直したり他の人に見せるときに便利です。
この中で、特に重要なのは強みと機会を掛け合わせたSxOの枠。強みを活かしたビジネス拡大を考える場合、SxOが最も重要となります。機会と強みの中で出た項目の組み合わせを変えてみることで、いろいろな戦略のオプションを出すことができます。
SWOT分析のポイントのところで、できるだけ数多く項目を出しておくと良いですよ、とお伝えしましたが、その理由の一つがここ。より多くの掛け合わせを作れるので、必然的に考えられるオプションの数も多くなる、ということになります。
上記のA整骨院の事例でクロスSWOT分析をしてみましょう。
強みを活かしながら弱みや脅威を克服していくための戦略が、いくつか見えてきましたね。
4-3.クロスSWOT分析が終わったら
ここまでで、いくつかの戦略オプションが並びました。とはいっても、これらすべてを一度に実施することは現実的ではありません。
次のステップとして、これらのオプションに優先順位付けと、実行に移す戦略の絞り込みをしていきます。
目標を達成するために最も有効な戦略はどれか、最も実行しやすい戦略はどれか、など、指針を決めて出てきた選択肢に優先順位をつけていきます。そして、実際に戦略として実行していくものをいくつか選んで実行に移していってください。
SWOT分析・クロスSWOT分析は、一度やれば終わりというものではありません。自分の状況や外部の環境が変わったときには、変化に対応した新しい戦略を立てるために、新しい前提に基づいた分析が必要になります。定期的にSWOT分析を行うことで、環境の変化をいち早く把握して事業戦略に反映させることをおすすめします。
終わりに
ここまで、現状を内部・外部の要因に分けて把握するための手法としてのSWOT分析と、自分のリソースと外部環境を掛け合わせて戦略を導くクロスSWOT分析を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
大企業だけでなく、スモールビジネスや個人の起業家にも役に立つフレームワークであることがお分かりいただけたかと思います。
初めは時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると要素の掛け合わせによる戦略の洗い出しなども、様々な角度からできるようになります。
SWOT分析を使いこなして、自分の強みとチャンスを最大限に生かせる、あなたならではの事業戦略を描いてみてください。
福田あかね
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