セルフブランディングの真の意味とは?堅実に自己価値を高める方法

Pocket

self-branding

「セルフブランディング」について関心をお持ちの方々は、恐らく「どうやったら、自分のビジネス(或は自分自身)をもっと際立たせることができるか」「どうすれば、自分の個性を良いイメージで世に認知してもらえるか」「どうすれば、付加価値の高い状態でビジネスを進められるか」という思いを抱えていることと思います。

そもそも「ブランディング」とは、顧客の共感や信頼等を高めていくマーケティング戦略の一つで、それを、自分自身に対して行うのが、「セルフブランディング」です。言い換えれば「自分自身を商品と捉え、その商品価値を高める行動」と言えます。

ところが、昨今の様々な“セルフブランディング”ノウハウを垣間見ると、「自分をいかに良く見せるか」という“テクニック”に視線が集中する傾向にあるようです。しかし、本当の意味での「セルフブランディング」に重要なのは、そうした小手先のテクニックではありません。それどころか、表面的なテクニックばかりに走ると、逆にあなたの価値を下げることにもつながります。まさに「痛い」or「イタイ」等と陰で言われる状態です。(「セルフブランディング」で検索をすると、続くキーワードに「痛い」と出てきますよね。)決してそうはなりたくないものです。

そこで、この記事では、テクニック偏重が逆効果となる理由も示しつつ、「セルフブランディング」を考える際に、本来最も重視すべきポイントと、その実践法について、具体例を交えながら解説をしていきます。
これができれば、あなたはもうテクニックに踊らされることはありません。「痛い」と言われ、いつの間にか友人を失うこともありません。そして、しっかりと地に足の着いた「セルフブランディング」ができることで、自ずとあなたの価値も高まり、思い描く理想的な顧客を引き寄せ、ビジネスの安定をつかむことができるでしょう。では、早速ご覧ください。

0.はじめに 〜ブランディングの定義〜

ブランディングを、単なる「イメージアップ」や「良く見せる方法」と捉えている人が多いですが、それはここでは「ブランディング」とは呼びません。まるで化粧を施すように表面上のイメージを作り上げたとしても、それが実態と離れていれば、見る人の期待は裏切られ、むしろイメージは損なわれてしまいます。

一方、弊社で重視している「ブランド」の3軸は、以下の通りです。

“ブランドの3軸”

  • 「志」:情熱、存在意義、目指すべき将来像やビジョン
  • 「場」:共感・応援を得られる分野、ニーズの高いマーケット
  • 「形」:専門性・独自性のある商品やサービス

(※「博報堂ブランドデザイン」より一部抜粋)

つまり、これらの3要素を整え、実践し、発信していくことそのものが、ブランドになっていくと考えています。
とは言え、とても概念的でつかみにくいと思いますので、次章より、具体的なブランディングの手法について、順に見ていきましょう。

1.【最重要】セルフブランディングの2大ポイント

結論からお伝えします。「セルフブランディング」を成功させるために、最も大切なポイントは、以下の2点です。

  • あなたが「社会や周囲に対してどんな価値を提供できるか?どんな貢献や影響を与えることができるか?」まずはそこを明確にすること
  • 明確化したものを「魅力的に伝わるような表現の仕方で、一貫性を持って発信し続ける」こと

つまり、あなたの強みや売りが、社会や周囲(ビジネスの対象)に対して、どうメリットがあるのか、そこを徹底的に掘り下げ、明確に絞り込むことです。これが、ブランドの核となります。

更に、せっかく絞りこんだポイントが、相手に伝わらなくては意味がありませんので、それをいかに伝わる表現にし、発信を継続するか、ということが大切なのです。

この作業を怠って、単に特技や一部の実績を見栄え良く羅列しても、相手の心に響くことはありません。逆に、こうした“核”を伴わないままテクニックに走ると、誇張や虚飾の色を感じ取られ、価値を高めるどころか、信用を失うことにもなってしまいます。

2.セルフブランディングのメリット

2-1.代表的なメリット

一方で、「セルフブランディング」が、きちんと機能すると、ビジネスの強力な推進力となります。

まず、あなたの強みや売りが、市場のニーズと合致し、価値も感じてもらえる状態になるので、集客や販売がスムーズになるでしょう。

人が購買を決断するまでには、大きく次の2ステップがあると言われていますが、

  • 興味関心をそそられる
  • 信用できる

ブランディングにより、あなたへの良いイメージが相手の中で育っていることで、この2段階がスムーズになり、購入に繋がりやすくなります。

また、「価格競争にならずに済む」という点も大きなメリットです。ブランディングで、しっかりと差別化が出来ていれば、価格も自分でコントロールでき、ビジネスも安定します。

2-2.典型例

では、わかりやすい例として、人がハイブランドの高級品を買うシーンを思い浮かべてください。

ハイブランドが今季の新商品を発表すると、それだけで「どんなものだろう」と興味を持つ人は沢山います。また、定番の商品であっても、いつかそれを手に取ってみたい、と関心を抱くものです。そして、決して安くはないお金を払ってそれらを購入するのも、「このブランドなら良いものだ」という信用があるからだと言えます。

つまり、ブランディングがしっかりできる、ということは、相手からの信頼をベースに、より高い価値を保った状態で、スムーズにビジネスが展開できるということなのです。ぜひ、時間をかけてでも、揺るぎない「セルフブランド」を築きたいものです。

では、次章からは、その実践法をお伝えしていきます。

3.セルフブランドの核の見極め方(1):「強み」の分析

この章と次の章では、以下の点について、その方法をお伝えします。

あなたが「社会や周囲に対してどんな価値を提供できるか?どんな貢献や影響を与えることができるか?」まずはそこを明確にすること

自分自身をどう商品化するのかを見極め、市場のニーズとの検証を行う段階です。

そのためには、一度、自分の強みや売りを体系的に整理する必要があります。その上で、どの強みであれば、社会や周囲に価値を提供でき、対象にメリットがあるか、という考察をするのです。

3-1.自分の「強み」をまとめる2ステップ

「自分の強み」を漠然と考えはじめても、思うようにまとまらない人も多いのではないでしょうか。なぜなら、「強み」とは、「自分では当たり前にできて、他人には凄い」と思ってもらえるものなので、自分では気付きにくいからです。

「強み」を見つけるには、コツがあります。

「素材を探す」⇒「それらを吟味しまとめる」

この2つのステップに分けて考えることです。
まずは、強みとなる「素材」をなるだけ多く集めてから、その上で吟味し、まとめあげるのです。

3-2.他己分析・自己分析

「素材」の集め方としては、「他己分析」・「自己分析」の両方を行います。

「他己分析」とは、ご存知の通り、周囲の人々にあなたの強みを尋ねてみることです。家族、友人・知人、上司、顧客、ライバル等、様々な視点からの「強み」をどんどん集めてみてください。思わぬ「強み」が出てくると思います。

次に、「自己分析」ですが、人は自分のこととなると客観的になれない、という弱さがあります。そこで、必要なのは「強みの分類」です。これからお伝えする5つの視点に沿って、客観的に自己分析を試みましょう。

1)本質的な強み
2)好きで情熱が湧くこと
3)最大の成果
4)得意なこと
5)克服してきたこと

そして、ここで集まった強みの素材群を眺めながら、ターゲットに響く素材はどれか、どう組み合わせれば他との差別化ができるか、等を検証するのです。

なお、この「自分の強み」の分析法について、詳しくは、「『自分の強み』を発見し、魅力的に表現して、“選ばれる人”になる方法」を参照してください。
他己分析の際の効果的な質問例や、自己分析の詳しい解説、具体的な事例などをお伝えしています。

4.セルフブランドの核の見極め方(2):絞り込み

「他己分析」「自己分析」で、強みの「素材」が沢山集まったなら、次に「それらを吟味しまとめる」というステップに移ります。

どのポイントを打ち出すか、他との差別化をどうするか、等を具体的に絞り込むのです。以下の視点に沿って絞り込んでみてください。

4-1.視点A:パッション・リソース・マーケット

集まった「強み」をこの3つの軸で分類し、重なり合うポイントを探ります。

  • パッション…自分がやりたいこと、目標
  • リソース…これまでの経験、得意分野、実績
  • マーケット…ニーズのある分野

self-branding01

全てが重なるポイントが見つかれば、その分野こそ、あなたが世に打ち出すべき「強み」です。とは言え、なかなか都合良く3要素を満たすポイントが見つからないこともあります。その時は手堅く、実績や経験のある「リソース」をベースに考えてみてください。

そこに全くパッションがなければ辛いのですが、少しでもパッションがあるならば、リソース中心で考え、且つ、ある程度マーケットニーズがある分野を探ります。
そして、走りながら、3つが重なるところを見つけていくのです。

4-2.視点B:大・中・小ポジション

「パッション・リソース・マーケット」が重なり合う「強み」の分野が見えてきたら、それを、更に絞込み、わかりやすい肩書きにします。

まずは、実際のクライアントの例をご覧ください。

●セミナービジネスを支援するコンサルタントとして起業した金子欽致(かねこよしとも)さんの場合

大:セミナービジネスコンサルタント
中:セミナー集客コンサルタント
小:コーチ、コンサルのためのマグネット集客法のコンサルタント

●整体師の開業をコーチングで支援する吉田しょういちさんの場合

大:マーケティングコーチ
中:整体師・治療院のための独立・起業・集客コーチ
小:“自宅で無理なく開業したい人”のための「自宅整体師開業」コーチ

これらの事例を見ていただくと、小ポジションの時点で「社会や周囲に対してどんな価値を提供できるか?」という点がハッキリしているのがお分かりいただけるかと思います。

このように、あなたの「強み」である分野について、「専門性」の切り口(ターゲットやジャンル、エリア等)を用い、大→中→小と、徐々に絞り込んでいきましょう。

※補足:「専門性」の主な切り口

  • ターゲット別
    業界・業種・階層・性別・年齢 等
  • ジャンル別
    集客、営業(新規・クロージング・フォローアップ・対法人)、広告、
    モチベーション、マネジメント、セミナー 等
  • エリア別
    神奈川県の、九州地区の、都内限定の、フランスの、等

4-3.絞り込みを恐れるな!

ただ、いざ絞り込もうとする時に、「絞り込むのが怖い」と感じるケースはよくあります。ターゲットが減るのでは?と感じてしまうためですが、実は逆です。

絞り込めば絞り込むほど、ブランディングとして効果が上がります。実際に、売上げも上がることでしょう。

それは、絞り込むことで、メッセージが明確になり、他との違いも際立ち、選んでもらえるからです。しかも、あなたの理想に近いクライアントばかりが集まるようになります。いきなりクライアントを何千人も取る必要はないのですから、絞り込んで「確実に」クライアントを獲得しましょう。

その結果、評判が集まることで、むしろターゲットを外れる層からも、ビジネスが舞い込むことはよくあります。ぜひ、次章で紹介している事例もご覧ください。

以上、この3・4章でご紹介した「強みの分析」と「絞り込み」で、

あなたが「社会や周囲に対してどんな価値を提供できるか?どんな貢献や影響を与えることができるか?」まずはそこを明確にすること

この点は、クリアになります。

他との差別化ができたあなたの「強み」と、絞りこんだ明確なポジションこそが、あなたの「セルフブランディング」の核となるのです。

まずは、このステップが何よりも重要ですので、じっくりと取り組んでみてください。

なお、この絞り込みについては、以下の2つの記事が参考になります。マーケティングでは、絞り込みのことを「ポジショニング」とも言いますが、その基礎から具体的な方法までを解説しています。
→「ポジショニング戦略こそマーケティングの要。定義・事例を超解説!
→「ポジショニングの分析法を一挙紹介!ポジショニングマップ〜3C分析まで

5.強み分析と絞り込みの成功事例

では、ここで、「強みの分析」と「絞込み」が成功している事例をご紹介します。

【事例1】起死回生した会計事務所

会計士の栗山隆司さんは、同業他社との顧客の奪い合いが厳しく、顧問先からも露骨に値下げを要求される状況が頻発していたため、何とか事態を打開すべく、新たな機軸を模索していた。そんな時、真っ先に思い浮かんだのは、顧問先の一つである人気ベーカリー店。余裕のある経営のためか、店主からはいつも「先生のおかげです」と感謝され、様々な対応も好意的であり、値下げ要求も過去に一度もなく、まさに理想の顧問先だった。そこで、栗山さんは、「何でもやれる会計士」というポジションを思い切って捨て、「ベーカリー店専門会計コンサルタント」という肩書きを名乗り、これまでの会計業務に加え、繁盛するベーカリー店のマーケティングノウハウを提供するコンサルティング業務も行うようにしたところ、全国のベーカリー店から依頼が殺到することとなった。

【事例2】“ほっそり脚”で大成功

スポーツジムの専属トレーナーとして勤務していた秋元恵久巳さんは、将来を見据え、起業を計画していた。その際「単なるスポーツトレーナーではなく、何か特徴を打ち出したい」と考え、絞り込んだのが「アラフォー女性のための、ほっそり脚づくり専門トレーナー」。彼女の祖母が脚を悪くし、自力で立てなくなったことから、精神的にも肉体的にも落ち込んでいく姿を見てきたことで、「脚が健康の原点」と感じた経験がもとになっている。その「脚」を機軸としつつ、「脚やせ」という女性ニーズの高い分野に的を当て、更に年代もアラフォー世代に絞り、「単なる脚やせではなく、健康的に10歳若く見られる体型づくり」をテーマに活動をしたところ、ブログやHPを通じて依頼が来るようになり、無事独立を果たすことができた。

これらの事例を見てもお分かりいただける通り、世の人々は、専門性の高い人や、「この人に頼むとどうなれるか」が明確にイメージできる人を選ぶのです。

「何でも出来る」人は、つまり「特徴のない」「選ぶに値しない」人だと言えます。あなたのブランドを際立たせるためにも、恐れずしっかりと絞り込んでいきましょう。

6.セルフブランドの魅力的な発信法

では、次に、第2のポイントである

明確化したものを「魅力的に伝わるような表現の仕方で、一貫性を持って発信し続ける」こと

について、どうすれば良いのかをお伝えしていきます。

「セルフブランディング」において、表現の仕方を考えることは、絶対に外せない要素です。せっかく練り上げた自分の「強み」と「ポジション」も、周囲に上手く伝わらないことには、宝の持ち腐れとなってしまいます。

また、継続的に情報発信をし続けることこそが、あなたの「ブランド」を築いていく王道でもあるからです。

6-1.魅力的な表現とは?

そもそも「魅力的に伝わるような表現」とはどのような表現でしょうか。その答えの一つが、「瞬間的に相手の興味を引ける」という要素です。

人々は、何らかの情報を求める際、たくさんの情報を比べ、取捨選択をしています。そして、その最初で最大の切り分けが第一印象なのです。

パッと見た時(或は聞いた時)に、興味が湧くかどうかで、あなたの発信に関心を持つかどうかが変わってしまいます。

そこで、まず、「セルフブランディング」における表現の第一歩としてはこれです。

「強み」や「ポジション」を、キャッチコピーにする。

これができると、瞬時に相手の興味を引ける上、発信の際に、沢山の使い道があります。

  • 名刺の肩書きとして
  • 自己紹介の最初の一言として
  • HPの見出しに応用する
  • メールやブログ・SNSで、投稿の頭につける

また、「キャッチコピー」は、印象に残りやすいため、「そういえばこんな人がいた」等と、話題に上げてもらいやすくなります。それが、口コミや紹介へと繋がっていくのです。

6-2.キャッチコピーの作り方

では、前章で紹介した「小ポジション」を応用して、キャッチコピー化を考えていきます。

<キャッチコピー化するための効果的な表現手法>

  • 実績、経験、特技、長所を盛り込む
  • 将来の自分(ビジョン)を盛り込む
  • 2つのベネフィットを入れる・・・・等々

小ポジションの時点で、かなり絞り込まれていますので、ターゲットへの訴求力は高い状態です。これに、上記のような手法で、磨きをかけていきます。

例)前章で紹介した吉田さんの例

大:マーケティングコーチ
中:整体師・治療院のための独立・起業・集客コーチ
小: “自宅で無理なく開業したい人”のための「自宅整体師開業」コーチ

【実績を盛り込むケース】

過去1000人の整体師をサポート!
“自宅で無理なく開業したい人”のための「自宅整体師開業」コーチです。

【将来へのビジョンを盛り込むケース】

整体が身近な存在になることで、日本人の元気を取り戻したい!
“自宅で無理なく開業したい人”のための「自宅整体師開業」コーチです。

【2つのベネフィットを盛り込むケース】

“自宅で無理なく開業し、年収1000万円を手に入れたい人”のための「自宅整体師開業」コーチです。

これは、ほんの一例ですが、見た人(聞いた人)に「そんなことできるの?」「私のこと?」等と反応を起こせれば、しめたものです。

なお、キャッチコピ—化の手法について、詳しくは「心を鷲掴みにする『自分のキャッチコピー』の例と作り方」を参照してください。

6-3.1分間スクリプトとしてのまとめ方

次に、キャッチコピーで引きつけた後に展開する、あなたの「強み」の詳細を、1分間程度でまとめておくと、「セルフブランディング」においては非常に便利です。

以下のような発信のシーンで使えます。

  • 自己紹介の冒頭の一言に続けて
  • 面談やプレゼン等での自己PR(商品PR)時
  • HPやチラシ等のプロフィール欄 等

また、日々の情報発信や行動に迷った時には、この1分間スクリプトに立ち返ることで、言動の軸がズレていないかを確認する基盤となり、一貫性を保つことが出来ます。また、このスクリプトの一部をより深堀りして発信すれば、情報発信のネタにもなるのです

なお、1分間スクリプトには、以下の6点を盛り込むと、より強く相手の興味を惹き付けることできます。

1.肩書きや商品名
2.ベネフィット
3.独自性
4.興味性
5.理由
6.クロージング

炙り出した「自分の強み」や、キャッチコピー化した表現を用い、この観点で整理し直して、肉付けを行いましょう。

self-branding02

なお、この「1分間スクリプト」について、詳しくは、「1分でクライアントの心をつかむエレベータートーク作成法」を参照していただければと思います。

※補足※
日常の情報発信において、より人を惹き付ける表現のコツについては、「人を魅了するプレゼン9のコツ|相手がつい前のめりになる圧倒的な伝わり方」が参考になるはずです。プレゼンに限らず、情報発信の様々な場面において万能に使えるコツをご紹介しています。

6-4.継続的な発信の重要性

そして、更に大切なのは「発信を継続すること」の重要性です。まずは、この3つの事例をご覧ください。

【事例1】“ほっそり脚”の秋元さんのその後・・・

第5章の【事例2】でご紹介した「アラフォー女性のための、ほっそり脚づくり専門トレーナー」秋元恵久巳さんは、独立後、特にYouTubeを活用し、実際の施術場面や、お客様の体系の変化を動画で公開し続けている。実際、そこからブログやHPにたどり着き、申込んでくる人も多いという。また、他のトレーナーや異業種の人と組んでのコラボセミナーや共同講習会も行い、情報提供と顧客の輪を広げる努力を続けた結果、今では全国から講習会の依頼が来るようになり、クライアントも全国規模に成長。現在は、自分と同じような施術が出来る養成講座もスタートさせている。

【事例2】自動車業界専門のコーチ?!

大村直樹さんは、起業前に受講した起業塾で、専門性を持つことの重要性を実感していたため、自分の過去の経歴でもあり、最も自信のある「自動車業界専門・カスタマーサポートコーチ」と名乗ることにした。当初はニッチすぎるかと少しの不安もあったが、ブログやFacebookでも積極的に情報発信をし、多様な交流会でもハッキリと「自動車業界専門・カスタマーサポートコーチ」と名乗り続けていたところ、あるコミュニティで出会ったコンサルタントが、某大手外資系自動車メーカーの販売店支援・カスタマーサポートができる人物を探しているという話になり、それを大村さんが外部コンサルタントとして引き受けることになった。それを契機として、大村さんのもとには、自動車関連業界からの仕事が続々と入るようになり、今彼は全国を飛び回っている。

【事例3】ワイン好きが高じて・・・

ワイン商社で働くヒラノミホさんは、好きなワインをツールに起業が出来れば、と考え、「ワインライフプロデューサー」として起業しようと決意。ソムリエのようにワインの蘊蓄を語るのではなく、ワインのある豊かな生活や場の提案をしたい、と思ったヒラノさんは、まず、ブログでワインライフに関する情報発信を始め、それと同時に毎月定例のワインセミナーを開催。ワインの背景を紹介したり、飲み比べをしたりと、文化的・学術的要素も加えて、楽しみながらワインを学べる場づくりを心がけた結果、口コミで評判が広がり、多い時には30名を越える参加者が集った。その中に、レストラン開業準備中の人がいて、ワインの品揃えの相談、といった仕事が舞い込んできたり、書き続けてきたブログを見た編集者から、ネット新聞のワインコーナーの仕事が入ったりと、徐々に活動の幅が広がっている。

これらの事例を見てもおわかりいただける通り、ブランドとは、地道な情報発信の継続によって築かれるものなのです。

6−5.良い情報発信と失敗する情報発信

ただ、情報発信の継続が必要とはいえ、単に手当り次第に、見栄え良く情報発信をすればいいわけではありません。

では、何を発信すれば良いのでしょうか。「自分についてどう発信しよう」と考えているならば、まずそこを改めましょう。

発信の基本は、まず何よりも、ターゲットの役に立つ情報です。

ターゲットが知りたいこと、ターゲットの悩みを解決すること、ターゲットの願いを叶える方法、このような有益な情報をこまめに伝えていくことです。長く書く必要はありません。難しく書く必要もありません。一般的なノウハウの提供だけでは、読みづらく飽きてしまうため、できるだけ読む人がイメージしやすいよう、身近な事例や、具体的な体験談などを一緒に盛り込んでみると、より反応が得られるはずです。
また、コンサルタント・セラピスト・士業のように、あなた自身が商品となる職業の場合には、あなたの人柄が伝わるような生い立ちのエピソードや趣味嗜好を織り交ぜるのも手です。親近感を持ってもらうことにつながります。

一方、失敗する情報発信としては、顧客目線を忘れている情報発信に尽きます

自分の成功談ばかりが披露されたり、宣伝・広告ばかりであったり、意味の薄い食事などの写真が続いたり、きらびやかな側面が強調されていたり…、そのような発信をあなたは目にしたいと思いますか?人は過剰なアピールに対しては、自然と逃げ腰になり、心を閉ざすものです。一旦そうなってしまうと、挽回は難しくなります。それでもそのことに気づかずに誤った発信を続けている”セルフブランディング”を、周囲は「痛い」と言うのです。

ですから、情報発信の際は、その発信が顧客の役に立つか、あなたのアピールに偏っていないか、顧客の不快に繋がらないか、よくよく吟味してみましょう。そして、迷った時は、絞り込んだ自分の強みやポジションに立ち返ってください。そのしっかりとしたポジションに裏打ちされた状態で、一貫性を持ち、顧客目線で発信し続けるからこそ、自ずと「あなたブランド」が作られ、価値が高まっていくのです。

7.セルフブランディング・おすすめ本

最後になりますが、更に「セルフブランディング」を深掘りしたいという方のために、セルフブランディングに関するおすすめ書籍を4冊ご紹介します。いずれの本も、ブランディグにおける定番の書籍ですので、一読しておいて損はないはずです。

7−1.パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す/著:ピーター・モントヤ,ティム・ヴァンディー

米国No.1のパーソナルブランド・コンサルタントである著者が、その構築ノウハウをマニュアルとしてまとめた一冊。10年以上前の書籍ではあるものの、本質を突いた内容は今も広く支持され、多くの起業家や経営者が教科書としている書籍です。

7−2.パーソナル・マーケティング/著:本田直之

サブタイトルに「どんな時代でも”選ばれ続ける人”になる39の法則」と付いている通り、読者が実際に、書籍のメソッドを自分で取り入れられるよう、さまざまな事例やエクササイズが散りばめられています。それを一つ一つ進めることで、パーソナル・マーケティングのフレームワークが身につく良書。自分の強みを見出すにも最適の一冊です。

7−3.自分ブランドの教科書/著:藤巻幸夫

見開きで1テーマを扱うなど、図やデザインも工夫されており、セルフブランディングの入門として、非常に読みやすい書籍です。様々なエピソードも紹介されるなど、「ブランディング」を身近に捉えることができるため、まずはこの本から着手するのも良いでしょう。

7−4.なぜ、優れたリーダーは「失敗」を語るのか /著:佐々木繁範

「セルフブランディング」の直接的なノウハウとは違いますが、本記事の後半でお伝えした「魅力的な発信」の一助となる書籍。日本人は、失敗=「恥ずかしいもの」と捉えがちですが、実は失敗談こそ、人々の共感を強く呼び、周囲の人にとっても役立つ内容なのです。人は誰しも失敗を重ねて生きているもの。その数々を宝に変える一冊です。

 

8.まとめ

以上、ここまで、以下の2つのポイントについて、その重要性をお伝えしてきました。

  • あなたの強みやポジションを見極め、きっちり絞り込むこと
  • それを魅力的な表現として作り込み、発信し続けること

小手先のテクニックではない分、いずれのステップも、多少の時間と労力を必要とするでしょう。また、効果が現れるのにも、時間が必要かもしれません。

しかし、この時間と労力の積み重ねこそが、本来「ブランディング」の過程そのものでもあります。決して即効性を求めず、楽しむ気持ちで、この「セルフブランディング」に挑んでください。

そうやって地道に築き上げてこそ、揺るぎない確固たるブランドとなっていきます。そして、徐々に徐々にあなたというブランドの3軸がまわり始めた時、気付けばあなたは、上昇気流に支えられた状態で、身も心も充実したビジネスを展開できることでしょう。

<あわせて読みたい!必読の人気記事>

ポジショニング戦略こそマーケティングの要。定義・事例を超解説!
ポジショニングの分析法を一挙紹介! ポジショニングマップ〜3C分析まで
「自分の強みがわからない」を卒業!強みの多角的分析法と表現法
【自分の強み・診断テスト】オススメ5種を徹底比較!〜気軽な無料からとっておきの有料まで〜
心を鷲掴みにする『自分のキャッチコピー』の例と作り方
1分でクライアントの心をつかむエレベータートーク作成法
コンサル型ビジネスで起業する人が特に陥りやすい3つの失敗

The following two tabs change content below.
鈴木理美

鈴木理美

株式会社コンサルタントラボラトリー コピーライティング担当 旅行会社でのコンサルティング営業や、金融機関でのFPコンサルティング経験を経て、2012年より秘書兼カスタマーサポートとして(株)コンサルタントラボラトリーに参画。幼い頃より文章表現を得意としてきたが、現社における業務の中で、代表の北野にコピーライティングの才能を見出され、現在はライター業務をメインとしている

無料メールマガジン登録