コーチングを成功させるオリエンテーションのコツ|信頼関係を築いてスタートダッシュする方法
コーチングを学んで、いざスタートしてみた・・・けど、どうも上手くいかない。クライアントの反応が悪かったり、「やります!」と宣言した行動を取らなかったり、コーチに依存的になってしまったり・・・
コーチングを始めたばかりの方にとって、そういった困った事態はよく起こりがちです。
でもそれは、あなたのコーチングスキルが足りてないわけでもなく、「相手がダメなクライアントだから」というわけでもありません。
上手くいかないコーチングの原因の9割は、「オリエンテーション不足」が原因です。
コーチングスキル以上に大切なオリエンテーションですが、実は、コーチングの本ではなかなか伝えられていない内容です。また、コーチング講座でも、スキルに特化していてカリキュラムに含まれていなかったり、含まれていたとしても非常に少ない時間だけ・・・というケースが多々あります。
実際に私も、某コーチング機関で認定試験を受けて「認定コーチ」になりましたが、オリエンテーションについて触れる時間は一瞬もありませんでした。あとから気づいたことですが、オリエンテーションなしでは、コーチングが上手くいくはずがありません。
この記事では、コーチングを成功に導くオリエンテーションのコツと、コーチングをスタートダッシュするポイントをお伝えしていきます。
オリエンテーションをマスターして、あなたのクライアントにより高い価値を提供できるコーチになっていってください。
それでは、スタートです。
失敗しているコーチングの原因は、オリエンテーション不足
多くの新米コーチに「コーチングが上手くいっていない・・・」という状況の詳細をヒアリングすると、こんなことが言われます。あなたも、実際にこんな場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか?
よくある失敗コーチングの例
- クライアントが行動しない
- クライアントが言い訳ばかりする
- クライアントが依存的になる
- あれこれと目指しているゴールが変わる
- 時間通りに始められない、すぐにスケジュール変更を依頼される
こんな事が続けて起こると、予定通りのコーチングを進めることが出来ません。結果、クライアントのゴールにも近づけませんし、コーチにとっても大きなストレスになります。
例えば、こんな具合になったりします・・・
- クライアントが行動しない
→ なので、いつも「未達でした」「出来ませんでした」という報告から始まるセッションになり、「どうすれば行動できるだろうか?」ということについて、毎回毎回話していてストレスになる。
- クライアントが言い訳ばかりする
→ 「時間が取れませんでした」「やろうと思ったんですけど、ダメでした」と言われ、もっと細かな行動レベルを設定しなくてはならず、一歩一歩しか進んでいかずに、もどかしい思いをする。
- クライアントが依存的になる
→ コーチに「◯◯してください」「◯◯はしてくれないんですか?」などというリクエストが増え、対応するものの、それ以外の行動を取らなくなる。セッション外のフォローがあまりにも増えて、ストレスになる。
- あれこれと目指しているゴールが変わる
→ ちょっと進んではまた戻り、進んだと思ったらゴールの再設定・・・ばかりで、なかなか前に進んでいかない。半年後のゴールに進んでいる実感がないので、「ゴール未達」で終わってしまい、コーチとしてのやり甲斐、手応えがなくなり、コーチングへの価値を感じられなくなる。
いかがですか?あなたももしかしたら、「ドキッ」とする内容があったかもしれません。
こんな場合のほとんどは、オリエンテーション不足が原因です。オリエンテーションが不十分なことにより、クライアントのコーチングへの本気度が低いままでコーチングをしています。つまり、クライアントが本気でゴールに向かう準備ができていないのです。
特に、コーチになりたての方はで、無料や極端に低い単価でのコーチングの場合は注意が必要です。
友人の延長線上で契約した場合や、無料で練習させてもらっている場合は、その相手からすれば「コーチングに付き合ってあげている」という状態になりがちです。こんなクライアントは、そもそも本気度が低くなりがちです。
そんな、相手が本気になっていない状態で、コーチの側だけが一生懸命に「傾聴」や「質問」を始めとしたコーチングスキルを駆使したとしても、そこから生み出す効果はとても低いのです。
そもそも何故、オリエンテーションが大事なの?
コーチの語源は、「馬車」です。
馬車に乗りたい人は、「行きたい場所」が明確で、「そこに向かう意思」があり、「相応のお金を払って」目的地に向かおうとします。
馬車を現代に置き換えると、タクシーに乗る感じでしょうか。
普段の生活圏では、ほとんど乗らない人でも、観光に行った知らない土地ではタクシーを使います。それは、観光スポットに早く行きたいからです。
調べればひとりで行けるかもしれないけど、「早く」「安全に」行くために使うわけですよね。
あなた(コーチ)は、タクシーの運転手だとすれば・・・
クライアントは、あなたが目的地に連れて行ってくれる人だと信頼して、乗ってくるわけです。
もし、タクシーがオンボロだったり、道を知らなかったり、車の運転方法があやふやだったら、困るわけですよね。
「この人と一緒だったら、目的地にたどり着ける」という状態を作るのが、オリエンテーションです。
ただ・・・タクシーであれば、運転手全員が道を知っている前提ですし、お客の側も乗り方が分かっているので、特にオリエンテーションなんてする必要はないです。
しかし、自分人生の中で「ゴール」を目指すコーチングは、ほとんどの方が使ったことがありません。
ですから、ちゃんと合意して、認識を合わせてコーチングをスタートすることが大切なのです。
オリエンテーションで行うことは、3つです。
- 信頼かつ親密な関係性を構築する
- コーチングのルール・実施方法について合意する
- お互いがコーチ・クライアントで良いのかを確認する
この3つを「お互いに」確認・合意することが大切です。
特に、コーチはコーチングについて十分な知識があると思いますが、クライアントはそうではありません。もし、知識があったとしても、「あなたの思うコーチング」と同じかどうかは、分かりません。
殆どの場合は、大小はありますが、どこかしらに認識齟齬があります。
この認識齟齬があったまま、コーチングをスタートしてしまうと、後から冒頭で挙げたような問題が起こってしまうのです。
国際コーチ連盟のコアコンピテンシーも大切さを伝えている
世界最大のコーチング機関、「国際コーチ連盟(ICF:International Coach Federation)」は、コーチに必要な能力(コア・コンピテンシー)を定義しています。
大きく4つの分類があります。
A:基盤を整備する
B:関係性を共に築く
C:効果的なコミュニケーション
D:学びと結果を促進させる
この「B:関係性を共に築く」がまさにオリエンテーションに当たります。
A〜Dの4つのうち、2番目に関係性を説いているということは、それほど重要だと伝えているんです。スキルやゴールはその後のCとDで説いていますが、コーチングスキルを使う前提として、「関係性」が必要だということです。
よくよく考えてみれば、当たり前ですよね。
相手と関係性を築けていない状態では、クライアントは緊張や警戒をしてしまい、正直なことを話せません。ルールが分かっていなければ、どのようにコーチングを活用すれば良いのかが分かりません。
スキルよりも大切なもの。それが、「関係性」なのです。
ちなみに1番目は「A:基盤を整備する」ですが、これは、コーチとしての土台をしっかり築こうという内容です。
「私はコーチである」という状態を持って、それ以降のB〜Dを駆使するという内容なのです。
何故、オリエンテーションを行うことがコーチングの成功に直結するのか?
もし、オリエンテーションを行わなかった場合には、どんなことが起こり得るでしょうか?
例えば、あなたがやったことのないスポーツを、先生に教わりに行ったとき、何の説明もなくいきなり指導がはじまったらどうでしょうか??
ちょっと、イメージしてみてください。
例えば、こんなことが起こりそうではありませんか?
- 不信感があり、練習に集中できない
- 思った指導がされず、信頼を失う
- 代金回収ができない
- 結果が出るまでに時間がかかる
- 先生に依存的になる
- 途中でやめてしまう
- 思ったゴールに達成できない
- クレーム・不満が出る
- 意欲を失う
順調に行っている間は良いですが、上手くいかなかったことがあったときに、これらのことが起こります。
これらを未然に防ぐのが、オリエンテーションです。
オリエンテーションをしっかりと実施すれば、お互いのことをよく知り、コーチングのルールを明確にしてスタートすることが出来ます。そういう事前準備が行われていれば、クライアントはそのルールに沿おうとしますし、ルールにそぐわない行動を取っていれば、「ルール通りにやろうよ」と戻すことが可能になるのです。
オリエンテーションでは具体的には何をするのか?
オリエンテーションで行うことは、以下の3つだとお伝えしました。
- 信頼かつ親密な関係性を構築する
- コーチングのルール・実施方法について合意する
- お互いがコーチ・クライアントで良いのかを確認する
具体的に、ひとつずつお伝えしていきます。
信頼かつ親密な関係性を構築する
まずは、お互いを信頼し、親密な関係性の構築からスタートです。
ちなみに、信頼と親密とは以下の意味です。
信頼=相手を信じて頼る
親密=何でも話せる関係
信頼できるけど親密さのない人、例えば、相性の良くない上司や社長のような・・・では、不十分です。
また、親密だけど信頼できない人、友達だけどビジネスを知らない・・・という関係性でも不十分です。
関係性を築くためには、お互いのことを「よく知る」ことが必要です。ここでは、お互いのことを自己紹介しながら、関係性を作っていくのですが、具体的にはこんなことを聞いていきます。
信頼関係を構築するための要素
- 名前で呼ぶ
- 約束を守る
- 肯定する
- 相手の興味に関心を持つ
- 共感する
- お手本を示す
- 自らコーチをつけて実績を出す
- ありのままを認める
- リクエストにすぐに応える
- 本・ツールをプレゼントする
- 相手のストーリーに共感する
- 過去のクライアントの成果集
- 質問する
- 相手に関心を持つ
- 実績を見せる
- 相槌・うなずき
- アイコンタクト
親密な関係を構築するための要素
- 接触回数を増やす
- 相手に興味を持つ
- (秘めている)話をする
- 一度に過ごす時間を長くする
- ユーモアを交える
- お互いの共通点を探す
- 共同作業をする
特に重要なのが、共通の話題を探すことです。
よく言われることですが、大切なのは、共通の話題と感じるかどうかは、クライアント側が判断するということです。コーチの側から「これ共通!」と思っても、クライアントに響かないポイントだとすれば、意味がありません。
相手に探してもらうためには、コーチ側が先に自己開示しておくことが必要なのです。
コーチングのルール・実施方法について合意する
ふたつめは、コーチングのルール・実施方法について合意することです。
ここでは、コーチングとはどういうものなのか、コーチングで成果を出すためのポイント、そのために必要な心構えやルールをお伝えします。
コーチ側で、事前に資料を用意しておきましょう。そして、一方的にならないように、お互いに読み合わせる形を推奨します。ルールや結果を出すポイントとは、例えば、このようなものです。
コーチングのルール(例)
- 自分自身のゴールに向けて、全力を尽くす
- 失敗は最大の学習として、恐れず挑戦する
- コーチとのコーチングを重要度の高い項目に位置付け優先する
- 計画と実行のギャップを検証し、次の課題を常に意識する
- コーチングの前には振り返りの時間をとり、経験・体験を整理する
- 何をテーマにコーチングを受けるか考えておく
- 自分に正直になる
- 変化を受け入れる
- 自分の感情や概念や思い込みに目を向けて自分を客観的に知る
- コーチに対して感じていることや要望は率直に話す
- 小さな成果を尊ぶ
- 時間は有限だと知る
- すべては自分が選択した結果だと受け止める
- コーチは守秘義務を守る
- 約束は守る
- 時間を守る
- 約束の変更は口頭で1日前までに連絡する
- お互いの人格と個性を尊重する
- お互いの関わり方に対して、恐れずフィードバックを取り交わす
- お互いの目的を常に意識した行動を優先する
- お互いが使う言葉の意味を共有する
コーチングで成果を出すポイント(例)
- コーチングは、自ら行動を起こすことが大切です
- コーチング・セッションの前には、必ずテーマを決めましょう
- 変化を柔軟に受け入れましょう
- 率直に話しましょう
- 全てはあなたが決めて選択した結果だと受け止めましょう
いかがでしょうか?
ここまでをしっかり読み合わせれば、コーチングにおける認識齟齬はほとんどなくなります。そして、「これほどのことをやるのか!」と、クライアントもより真剣になっていきます。
読み合わせる中で疑問点や質問があれば、その場で解消して進めていくことで、信頼関係はさらに高まります。
信頼で親密な関係を作り、コーチングへのルールを合意したら、「契約」です。
お互いがコーチ・クライアントで良いのかを確認する
ここまで進む間に、クライアントはコーチングへの心の準備が整っていきます。
そして、お互いに「この人がコーチであればゴールに到達できそう」「この人をクライアントにしていきたい!」と思えば、契約に移ります。
先に述べたルールに加えて、具体的な実施の方法を合意します。
コーチング実施方法(例)
- コーチング開始日
- 基本スケジュール
- 実施方式(対面/電話/Skype/Zoom)
- 料金/支払いタイミング
コーチングを始めたばかりの方は、クライアントをなんとかして早く取りたい・・・と思っていることでしょう。しかし、オリエンテーションが不十分で、クライアントにしたくない方を無理やり契約しても、上手くいきません。
そんな相手をコーチするよりも、あなたに合ったクライアントを探してコーチするほうが、あなたにとってもクライアントにとっても効果的です。
オリエンテーションを成功させるコツ
オリエンテーションの具体的なやり方を補足するために、成功のコツをお伝えします。事前にやることとしては、2点です。
オリエンテーション前のコツ
- オリエンテーションの流れと、何を行うのかを事前に伝えておく
- コーチから自己開示しておく
信頼関係構築の一環ですが、「何を、どのぐらいの時間で行うのか不明」なのは、相手にとっては大きな不安要素になりかねません。事前に所要時間(60分とか90分とか)と行う内容の流れを伝え、オリエンテーションへの不安を消しておきましょう。
そして、限られた時間を有効に使うために、コーチから自己紹介メールや動画を送るなど、積極的に自己開示を行いましょう。
また、事前アンケートを取っておくのも、時間を有効に使えるようになります。
オリエンテーション時のコツ
そして、オリエンテーション実施時にも以下のことに注意しましょう。
- 約束を守る
- 時間を守る
- 相手の疑問・不安をすべて潰す
- コーチングに対して、真剣になってもらう
- 自分のスタンスを明確にする
当たり前のことですが、約束や時間を守ります。特に、「60分でオリエンテーションを実施する」と伝えたなら、60分間で必ず終わらせます。良かれと思って延長するのは逆効果。「時間も守れない人」として認識されてしまい、信頼関係を失います。
クライアントは、コーチングに対して多少なりとも不安を感じていますし、不明点もあります。小さな疑問や不安をすべて潰せるように、相手の質問や疑問に答えていきましょう。もし、わからないことがあれば、「調べてすぐに連絡する」と伝え、早急に対応しましょう。曖昧な回答や誤魔化しは信頼関係を失います。
オリエンテーションを行っていく中で、クライアントのコーチングに対しての真剣度を高めていきます。・・・というか、順を追って踏めば、自ずとそうなっていきます。そして、コーチのスタンスも明確に伝えて、真剣度を伝えましょう。
オリエンテーションが終わったら次に行うこととは?
オリエンテーションが終われば、コーチングの準備が全て整いました。
次は、日を改めて「プレ・コーチング」をします。
プレ・コーチングでは、明確なゴールを設定する「ゴールセッティング」と、ゴールに向けての大きな進め方を決める「プロセス設計」を行います。
その前段として、相手のことを深く知るための「アセスメント」を宿題にして、プレ・コーチングで読み合わせるなど、本気度の高まった相手に早くコーチングをスタートしてあげましょう。
プレ・コーチングについては、また別の記事でお伝えしますね。
おわりに
オリエンテーションは、一見面倒くさいように思えるかもしれませんが、コーチングのスキル以上に大切なことです。
コーチングを機能させるためには、信頼関係構築とルールの合意が何より重要です。
そして、もしコーチングの途中で「上手くいかないな・・・」と感じることがあれば、初心に立ち返って、もう一度オリエンテーションをやり直す・・・ということもオススメです。
クライアントが本気でゴールに向かって、コーチングを活用したいと思うようになりさえすれば、あなたにとっても理想的なコーチングが出来るようになります。
まずは、この記事を参考にしながら、オリエンテーションを行えるようになってください。
あなたのコーチ力のUPを応援しています。
佐藤 友康
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