ワークアウトには、しばしばファシリテーションが取り入れられます。これを実行する人物がファシリテーターです。
ワークアウトの意義や効果を高めるには、コーチと共通したスキルや意識が、このファシリテーターには求められることになります。
ファシリテーションを導入したワークアウトを実施する際、ファシリテーターはどのような役割をこなすべきなのでしょうか。ステップごとに説明していきます。
1.ファシリテーションの効果を上げるための企画及び準備
何を目的にワークアウトを実施するのかを考えなければいけません。
ワークアウトの目的の明確化や、それに誰が参加すべきなのかを考え、具体化させます。問題や課題についても整理・分析し、ワークアウトによって導き出すべきことについて、事前にある程度定めておきましょう。ゴールがあるのとないのとでは、進行も結果もまるで変わってきます。
日時や場所のセッティング、進め方などを決定し、参加する人物のモチベーションを考慮した招集方法や呼びかけを行ってください。その人たちに対して何を準備しておくべきかも伝えておかなければいけません。
2.ワークアウトの方向性の決定
ワークアウトには「どこへ向かいたいのか」の明確化が求められます。ゴールの設定と似た概念ですが、それを意識しやすいようゴール地点だけではなく、そこまでの過程もあらかじめ示しておくべきです。
参加者全員がその方向性や問題意識を共有し、サポートし合える体制も整えておきましょう。同時に、それが可能となる手順管理も行います。
ワークアウト中は、その場にいる全員が関心を示し、意見を述べ、正しいゴールへと向かって議論されているかなどを確認しましょう。
3.モチベーションの向上を意識
ワークアウトの場にいても、問題意識を持たず解決に向けて積極的に発言・発信しない人がいれば議論の意義が半減します。全ての参加者が、真の意味でその議論等に参加している必要があるのです。そのためのモチベーションもファシリテーターは作り出さなければいけません。
ワークアウト中はその意識を維持させ、発言の手助けや議論の整理などのサポートを行います。
4.参加者のバランスの構築と維持
会議などの場では、どうしてもその場にいる人物たちの上下関係等により、発言力に偏りが見られることがあります。特に強者に支配されてしまうと弱者は何も発信できず、健全な答えや解決策が導き出されなくなる懸念が生まれます。
ファシリテーターはそのような歪なバランスを正し「一部の意見のみの主張が許され、それ以外の声は届かない」といった状況を改善しなければいけません。少数意見もテーブルに上げられるような環境も整えることが求められます。
5.参加者の声に耳を傾ける姿勢の提示
ファシリテーターは具体的な意見を述べることはできません。しかし、参加者の一人であることも間違いないのです。どのような態度や姿勢で議論に参加すべきなのかを、自ら参加者に示すことが求められます。
場の空気感やその場にいる人たちの意識にも関わることになるので、ファシリテーター自らがお手本のような形でそれを示していきましょう。
6.排除してはならない多様な意見
できる限り多様な意見が出る会議の場の方が、組織の形としては健全です。どのような意見であっても排除はせず、テーブルに乗せなければいけません。むしろそれを歓迎し、そこから新たな解決策などを導き出すための働きかけをファシリテーターが行う必要があります。
むしろ、反対意見や突拍子もない発言もできるだけ多く引き出すべきです。それが可能な雰囲気や空気感を作ることも重要な役割となります。
7.意見や状況などの記録
ただ会議やワークアウトを進行しても意味がありません。どのような意見が出され、それに誰が反応したのか、事前に定めたプロセスがどの程度まで進んだかなどに関しての記録を取っておきます。
参加者がそれらを共有できるようにしておくことで、意見や発言を整理しやすくなるはずです。
必要に応じて方向性を正し、あるいは改めて確認しましょう。場合によってはワークアウトの手順そのものを再度組み直す柔軟さも求められます。
8.多様な意見の整理と共通点の提示
会議で多様な意見の発信を促せば、必ず意見がぶつかることになります。しかし、その対立する意見であっても、共通点が隠れている可能性もゼロではないでしょう。意見を整理することで共通点を見出し、もし発見できれば、それを参加者へと提示します。あるいは、参加者自身に発見してもらえるようサポートします。
もし共通点が発見され理解されれば、明確なゴールを導き出すための一つのポイントとなるでしょう。
9.決断と実行のスピードアップ
いくら議論が活発に行われても、そこから生まれたアイデアを取り入れるための決断や、それを実行するための行動が遅ければ話になりません。企業などの組織が生き残るためにはスピード感が何よりも重要です。
ワークアウトの場で発信された意見は迅速に取りまとめ、一定の決断を下す必要があります。また、それらをすぐさま実行へと移すことも求められてくるでしょう。
意欲や新鮮さを維持したまま取り組めるため、より事業やプロジェクトが活性化されることに繋がるはずです。
10.追加の会議のセッティング
一度のワークアウトで全ての問題が解決するとは限りません。必要に応じて追加の会議等をセッティングし、残る課題をできるだけ早く解決するために動く必要があります。
メインのワークアウトが終了した時点で、その内容などをどのようにフォローしていくのかを具体的に検討し始めましょう。ミニワークアウトという形で議論を活性化させていく計画や、それの実行も重要になってきます。
11.確認のためのミーティング
ゴールにたどり着いて、それで終わりではありません。問題が解決がなされた時、プロジェクトが完了した時はミーティングを開催し、ワークアウトに参加した人たちで、その過程を振り返り総括します。
何が成功し何が失敗したのか整理・分析した上で、それらを組織の財産として記憶と記録に留めることを徹底しましょう。
以上が、ファシリテーターが担うワークアウトや会議などでの役割となります。これらを円滑かつ的確に行うためには、相当なスキルを要することになるでしょう。
コーチングを部下などに行う立場である管理職やマネージャーなどにとって、こうしたスキルは欠かすことができません。
また、ファシリテーションを積極的に取り入れる組織は、コーチングという概念や重要性を知ることになるはずです。加えて、ファシリテーターの役割がこなせれば、コーチとしてのスキルをさらに上げることにも繋がるでしょう。
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