クライアント自身が口にしたゴールに向かってコーチングしているはずなのに、クライアントのモチベーションがちっとも上がらない…という経験はありませんか?
そのような場合、そもそものゴール設定が誤っている可能性があります。ゴール設定を誤れば、効果が出ないことはもちろん、セッションが迷走したり、コーチング自体が楽しくなくなり、価値も下がってしまいますね。
ゴール設定の間違いでありがちなのが、クライアントの「真のゴール」と「仮面のゴール」を取り違えてしまうことです。
この記事では、例を挙げながら「真のゴール」と「仮面のゴール」について解説し、真のゴールを引き出す方法について解説していきます。
コーチングは、ゴールなしには機能しません。したがって、コーチングの第一歩はクライアントと目指すゴールを設定することになります。
そこでコーチはクライアントと話をする中で、テーマや課題、ゴールなどを聞いていくわけですが、実は初めにクライアントが口にするゴールは、必ずしもクライアントが本当に手にしたいものとは限りません。
むしろ、初めから自分が本当に望んでいることを自覚している人はごく少数で、多くの人は自分が本当に達成したいゴールははっきりとわかっていないことが多いものです。
例えば、転職を例に考えてみましょう。一口に「転職」といっても、その中には「もっと給料のいい仕事につきたい」「やりがいのある仕事がしたい」「人間関係の良い職場で働きたい」など、さまざまな気持ちがあるはずです。
みんな「転職したい」という願いは共通ですが、その中にある気持ちが異なるので、ゴールも当然、人それぞれ異なります。例えば「やりがいのある仕事がしたい」のであれば、「資格を取ってスキルアップする」というゴールができるかもしれません。そして「スキルアップできた」と感じられた時が、ゴール達成です。
Aさんは、「年内に転職する」ことを望んでいました。しかし、その望みを叶えたらどうなるのかということを探っていくと、「職場の人間関係から解放される」とあまり楽しそうではない答えが返ってきました。そこで「もし転職をしなくても職場の人間関係から解放されたとしたら、どう思いますか?」と聞いてみました。
するとAさんはここで初めて意識が自分に向かったようです。これまでは自分の周りの状況にとらわれ、「自分が本当に望んでいる仕事」について考えることを放棄していたのです。
コーチングで重要なのは「自分がどうありたいか」という気づきを与えることです。常識や理屈、周囲の反応を基準にして「どうあるべき」と考えている人は、自分を制約してしまっています。そこに気づかせ、行動の幅を広げてあげなければいけません。クライアント自身がテーマの中心なのです。
Aさんは結局、「自分が望んでるのは転職そのものではなく、人間関係が良好な職場で仕事をすることだ」という思いに気付きました。そして、「転職したい」というゴールは、「直属の上司と信頼関係を構築する」ということに変わりました。それ以後、Aさんは仕事にも前向きに取り組めるようになりました。
このようにゴールについて考えを深めていくうちに、その人自身も見えていなかった事柄がクリアに見えてくることがあります。これは、仮面をとったり、皮をむいていくことと似ています。
仮面をかぶったままのゴールを真の目標だと勘違いしてしまうと、どんなアプローチをしても行動のモチベーションが上がらないので目標を叶えられることもありませんし、コーチングそのものも楽しくなくなってしまうのです。
仮面のゴールではない、「真のゴール」を設定するためには、セッションの中で質問やフィードバックによって、クライアントが本当に望んでいることを明らかにしていくことが有効です。
真のゴールを引き出す質問とは、例えば以下のようなものがあります。
これらの問いに対して、クライアントがどう答えるか、表情や声のトーン、間、しぐさなどをよく観察し、それをフィードバックして気付きを促していきます。
コーチングをしていて相手からワクワク感が見えてこなかったら、それは真のゴールではないのかもしれません。
ゴールを設定するための時間をたっぷりとってコーチングすることで、結果的に真のゴールに近づいていくことができます。コーチングでは「その人自身がどうしたいか」ということを念頭において、可能性をさぐっていきましょう。
ブレイクスルー英語コーチ 津田塾大学卒業後、証券会社、PR会社、留学等を経て外資系銀行の広報部にて広報業務全般に従事。東日本大震災をきっかけに、震災復興支援業務に携わるとともにコーチングを学び、現在は【一目置かれる英語を話すための発話・発音コーチング】を提供している。仙台在住。二児の母。コンラボには2016年よりライターとして参画。また、ストレスクリア®コーチとしても活動中。
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