最近、日本でも「目標管理制度」を導入している企業が増えました。とはいえ、きちんとその制度が機能している企業は少ないのが実情ではないでしょうか。
基本的に「目標管理制度」は、「設定」「過程」「評価」の3つの流れで行う必要があるのですが、多くの企業ではこの「評価」の部分だけに着目される場合が多いのです。つまり、目標達成率が50%しかない、120%を超えた!などと、結果だけに注目されてしまうのです。
目標に対して良い結果を出すのは大切なことです。しかし結果ばかりを追求していると、たとえ目標をひとつ達成しても、その次のフェーズで目標達成を逃してしまう場合があります。本当に大切なのは、結果や評価ではなく「適切に目標を設定すること」なのです。ここでコーチングが重要になってきます。
目標を設定するには、「上から考える発想」と「下から考える発想」の2つの方法があります。まず「上から考える発想」とは、に会社全体の売上目標が各部署・各営業所・各個人などに割り当てられるような場合です。一年間の目標についても、四半期の目標・月次の目標・今日の目標というように時間軸で割り振られます。また、「下から考える発想」は各営業所や個人の実績を基にした設定方法です。「今期これだけの売上を達成したから、来期はこれだけの売上を目標にしよう」という考え方です。
この2つが合致していれば問題ないのですが、ギャップが生まれてしまうこともあるのです。つまり会社からの期待値と、自己の実績の間に溝が生まれてしまう場合があります。部下が、会社から提示された目標に対し「こんな目標は無理だ」と感じてしまいます。このギャップを放置して「目標を達成するためにがんばれ!」と言っても、部下のモチベーションは下がる一方です。
目標管理制度がうまく機能していない企業では、このギャップが埋められていないことが多々あります。上から与えられた目標値と下からの現実的に算出された数値のギャップを埋めることが何より大切なのです。とはいえ、中間管理職の立場では上からの期待値を下げることはできません。となると、現場からの数値を上方修正するしかありません。では、その具体的な方法も見ていきましょう。
この目標設定の場において、コーチングでは3つの手法を考えます。1つ目は、「個人の能力を高める」ことです。部下とひとくちに言っても、必要とされるスキルはそれぞれによって異なりますし、本人の特性も違います。
同じ仕事をしていても、ある人は「商品知識については詳しく説明できるが、セールストークが苦手」、またある人は「知識は不足しているが、接客が得意」といった場合もあるでしょう。このような違いを無視して画一的な指導を行っても意味がありません。前者には接客のロールプレイが効果的でしょうし、後者には知識を習得するための研修が必要でしょう。
こういった各メンバーの特性をコーチングで把握し、ニーズに合わせた個別指導を行えば、個人の能力を高めることが可能です。つまり、目標を遂行できる力がつくのです。
2つ目の方法は、「やる気を高める」ということです。仕事において、気分が乗っているかどうかは大きくパフォーマンスに関わってきます。この気分をうまくコーチングで上げることができれば、部下の能力は短期間にアップするでしょう。組織の中には実力はあってもやる気が低いために結果を残せないというメンバーもいます。こういったメンバーのために、上司はまず認めて褒め、ときに叱る必要があります。
3つ目は「やり方の見直し」も大事です。能力もやる気もあるのに結果が出せない場合は、仕事のやり方自体に問題があるかもしれません。この場合には、上司と部下が一緒になって問題を洗い出しましょう。コーチングを行い、部下が自身で考え、答えを引き出せれば特に良い結果につながるでしょう。
この3つの手法を身につければ、目標を設定する段階で、個人の特性や能力を見抜き、それに合った指導でやる気を高めることができます。それに加えて仕事のやり方を改善していけば、一見高すぎるように思える目標に対しても、前向きな気持ちで取り組むことができるようになります。
上司が目標を押し付け、「どうにかしてがんばれ」というだけでは部下は動きません。目標を管理するということは、数字だけを計画するのではなく、人をどう動かすかということです。このことを念頭において、設定・過程・評価という全体の流れを見ながらマネジメントしていきましょう。結果は必ずついてきます。
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