素晴らしいゴールや目標を設定したのに、クライアントが一向に行動を始められずに足踏みしている…という状態に陥ったことはありませんか?もしかしたら、クライアントはゴールへのプロセスが抽象的で、具体的に何から着手すればいいかが分かっていないのかもしれません。
そんな時には、ゴールに向かうプロセスを具体的にして、最初の一歩を明確にする「チャンクダウン」が有効です。
この記事では、チャンクダウンについて解説し、ポイントとコツを分かりやすくお伝えしていきます。
目次
チャンクというのは「かたまり」のこと。チャンクダウンとは、抽象度が高くて、行動に移すイメージがわきにくいことを、より小さな行動レベルのステップに分解していくことです。
チャンクダウンをすることで、抽象度の高かった物事が、より具体的で詳細な行動へと落とし込まれていくのです。
例えば、「カレーを作る」がゴールだったとします。始めてカレーを作る人は、それだけでは何をどうしたらいいものか、途方に暮れてしまうかもしれません。
でもそこに、作り方を詳細に説明したレシピがあれば、どんな材料をそろえて、どんな手順で調理するかが分かります。さらに、レシピに沿って一つ一つ作業を進めていけば、カレーができあがりますよね。
チャンクダウンは、クライアントがゴールを達成するために必要なプロセスを材料や手順に分解して、ゴール達成のためのレシピを作っていく作業なのです。
クライアントがゴールに向かうためのプロセス設計は、抽象的なものを具体的な行動に落とし込んでいく作業です。
人は抽象度が高いと、どのように行動したらよいかが分かりません。チャンクダウンすることでプロセスを小さく分解していくと、何をどうして良いか分からなかったものが、一つ一つの具体的な行動として見えてきます。その結果、するべきことが明確になり、行動を起こしやすくなっていくのです。
また、チャンクダウンには気軽に取り組むことができるようになるというメリットもあります。一つ一つの小さな行動レベルにチャンクダウンしていくと、大きなゴールも小さな行動の積み重ねだということが分かり、ぐっと気が楽になります。
チャンクダウンすることで、ゴールの大きさに目を奪われて圧倒されるのではなく、軽い気分で小さな行動を積み上げられるようになるのです。
それでは、具体的なチャンクダウンの進め方について説明をしていきます
チャンクダウンするときは、ゴールを達成するために必要な要素をチャンクで捉えて、それぞれに必要な行動に細分化していきます。
「要素」とは、ゴールを達成するために必要なもののこと。
知識やスキル、ツール、行動、習慣、考え方、ものの見方捉え方、などです。
例えば、「ダイエットして体重を5キロ落とす」というゴールをチャンクダウンしてみます。
まず「何があればこのゴールが実現するか」という観点から必要な要素を洗い出します。
ダイエットといえば
でも、これではまだ抽象度が高くて具体的な行動には結びつきません。
もう少し、行動できるレベルまで具体的にしてみます。
↓
例として「運動する」を、もっと具体的にしてみると:
だいぶ具体的になりました。
↓
「プールで泳ぐ」の行動を「いつ、どのように」という手順を加え、より具体的にしてみます
これなら、いつ、なにを、どうすればよいのかが明確なので、行動に移して行けそうです。
このように、「5キロ減量」というゴールのためのそれぞれの要素を具体的な行動レベルに細分化していきます。
そして、それをいつ、どのように行うかを具体的に決めて、詳細な行動の計画に落とし込んでいくのです。
チャンクダウンを行っていくときには、以下のような質問が有効です。
「形にするために必要なものは何ですか」
「どんなスキル/能力/ツールが必要ですか?」
「何があればそれが手に入りますか」
「何をすればそれが手に入りますか」
「どんな状態になることが必要ですか」
「何があればその状態を作れますか」
「何をすればその状態を作れますか」
「どんな考え方をすればいいでしょう」
「どんな習慣をつくりますか」
「不足しているものは何ですか」
「どんな優先順位で進んでいけばいいでしょう」
「何から始めますか」
チャンクダウンをする時には、すぐに実行できるという、具体的な行動レベルまで落とし込むことが大事です。具体的な行動レベルとは、何を、いつ、どうする、ということが明確になっている、ということです。
せっかく素晴らしいゴールを設定しても、行動レベルまで落とし込めていないと、肝心な最初の一歩が「一生懸命頑張る」とか、「精一杯努力をする」といった漠然とした決意表明で終わってしまいます。
大きな目標を、自分がその日その行動をしたか、しなかったかが一目瞭然なくらいの小さな行動目標にまで細分化することによって、人は初めて行動を起こすことができるのです。
チャンクダウンをする時には、クライアントの知識、スキル、経験等に合わせたチャンクの大きさにすることが必要です。
例えば、先ほどのダイエットの例で言えば、「日ごろから運動している人」と、「これまで何も運動をしていない人」とでは、スムーズに行動に移すためのチャンクの大きさが全く違ってきます。
日ごろから運動している人なら「プールで泳ぐ」で済むかもしれません。一方、初めて運動を始める人なら、「自分にできる運動を考える」というところから始め、そのために必要なものを一つ一つ調べなければならないかもしれません。
クライアントのレベルによって、どこまで細かく作業を落とし込むかが全く違うことがお分かりいただけるかと思います。
ゴールまでのプロセスを行動計画に落とし込むときには、クライアントに確認しながら、スムーズに行動を起こせるチャンクの大きさにしていくことが大切です。
チャンクダウンをしたままセッションが終わると、何をどうしていくかが具体的になっている一方で、意識がその細かなステップの一つ一つに向いていて、あまりに現実的な感じになってしまうことがあります。
そこで、チャンクダウンしたときには、最後に「チャンクアップ」してセッションを終えることをおすすめします。チャンクアップとは、細かくしたチャンクをもう一度まとめ上げて、抽象度の高い大きな塊としての自分のゴールを見ることです。
具体的・現実的なものの集まりではなく、自分の目指すゴールを俯瞰して見ることで、クライアントはそのゴールのそもそもの目的や意義を再確認することができます。
それによってクライアントはゴールを目指すことに対して「快い」感覚を持ってセッションを終えることができ、気分良く行動に移ることができるのです。
「どんなゴールにたどり着けそうですか?」
「ゴールするとき、あなたはどんなものを手にしていますか?」
「どんな気分でゴールできそうですか?」
「こうしてたどり着いたゴールは、あなたにとってどんな意義がありますか?」
いかがでしたか。
チャンクダウンを行うことで、クライアントはゴールまでの道のりを具体的な行動としてとらえられるようになることがお分かりいただけたかと思います。
一つ一つのプロセスが具体的であればあるほど、クライアントは行動が起こしやすくなり、着実にゴールに近づいていくことができます。
クライアントをサポートするための強力なスキルとして、ぜひ活用してみてください。
ブレイクスルー英語コーチ 津田塾大学卒業後、証券会社、PR会社、留学等を経て外資系銀行の広報部にて広報業務全般に従事。東日本大震災をきっかけに、震災復興支援業務に携わるとともにコーチングを学び、現在は【一目置かれる英語を話すための発話・発音コーチング】を提供している。仙台在住。二児の母。コンラボには2016年よりライターとして参画。また、ストレスクリア®コーチとしても活動中。
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