コーチを受ける人のポテンシャルをどれだけ引き出せるか、これがコーチングの最大のポイントです。そのために必要なコミュニケーションが肝となると言ってもいいでしょう。
クライアントや部下の自主性や行動力を奪うことなく、モチベーションを保つ、あるいは上げる。部下などが自ら発見や気付きを得るような環境を作る。このようなポイントから、コーチングはマネジメントの一環であるとも言えるのではないでしょうか。
ここで勘違いしてはいけないのは、コーチングのみで全てが解決するというわけではないこと。マネジメントの一環ではあるものの、それのみでマネジメントとしての役割が全てまかなえるというものではありません。
ある仕事をこなすために必要な業務があったとして、その業務について全く知識を持っていない人にコーチングすることなどできるでしょうか。恐らく無理でしょう。それはコーチングではなくティーチングと表現される教育や指導であり、説明したようなクライアントや部下のポテンシャルを引き出す効果は期待できません。
知識が皆無であれば、それに対してティーチングを行い、最低限の知識や方法などを伝え、必要であれば企業やグループ、チームごとのルールなども教え、クライアントや部下の目指すべき場所が明確になった際に、ここで初めてコーチングをする意味や価値が生まれるのです。
そもそもマネジメントとは、経営や管理などを意味する言葉です。これらを適切に行うためには、指示や命令なども不可欠となってくるでしょう。このことからも、コーチングそのものがマネジメントに代替するものという概念は見出すことができないはずです。
つまり、的確にマネジメントがなされ組織として機能して初めて、そこに属する人たちのポテンシャルを引き出すコーチングが必要となってくるわけです。裏を返せば、マネジメントが機能していない組織においては、いくら価値のあるコーチングを導入しても、それが生かされることはないことになります。
スポーツで考えてみるとわかりやすいかもしれません。例えば、バスケットボールという競技には、共通のルールがあります。どのように試合を進めていき、どのような反則があり、どのような形で得点していくのかというルールが、あらかじめ決められているわけです。
もしコート上に立った選手たちが、それらのルールを把握していないままに試合を始めたらどうなるでしょうか。もちろん、そんなものが成り立つわけがありません。
バスケットボールのルールや決まりごとが存在し、選手たちがそれを認識した上で行われるからこそスムーズにゲームが展開し、時にドラマや感動が生まれ、結果や成果が出てくるのです。
企業は従業員に対して、こうしたスポーツのルールに相当する、企業それぞれのルールや規範、組織、それぞれの仕事の役割や方法などを伝える必要があります。それを知らないままに仕事を任せていては、結果や成果など出てくるはずもないからです。
そうしたルールや仕事の方法などを共有・伝達するために、組織には上下関係が存在し、それぞれに任された役割も存在しています。コーチングは、これらを破壊するものではありません。
上司は部下に対して、ルールや規範、組織の在り方、仕事の役割や方法などをしっかりと伝えることが求められます。上で紹介したティーチングに当たる行為です。全てがコーチングで解決できるわけではなく、マネジメントを的確に行うためにはティーチングも必要となり、その上で必要な場面でコーチングを行うなど、その使い分けが重要なポイントとなってくるわけです。そのためには、上司と部下、コーチとクライアントという立場の違いが必須であることも認識しておくべきでしょう。
コーチングが必要となるのは、目標設定に関して部下と話し合うケースなどが挙げられます。設定した目標に届かず部下が悩んでいる時、成果を出した部下に対してさらに上の目標を目指してもらいたい時などです。問題やトラブルが発生した際もそうですし、新たな事業を展開する際などにも、コーチングが必要となってきます。
そうした場面では、部下たちはすでに組織やルールについては理解しているはずで、それを踏まえた上で、新たな能力を発揮する必要があるためです。
コーチングは何も1対1のみで行うものとも限りません。会議によっては複数人が関係者として同席することも多く、こうした場面ではグループコーチングを取り入れたり、ワークアウトなどを行ったりします。
こうした手法も積極的に導入しながら、コーチは部下やクライアントのポテンシャルを引き出し、能力を高めるためのコーチングを適切かつ的確に進めていかなければいけません。
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